なんちゃって四駆はいらない?! ホンモノの四駆はコレだ!!!

 いよいよ冬本番! 冬将軍の季節がやってきました。雪道を安全に走るのはもちろん、走りを楽しみたい人にとって、本格的な4WDシステムを持つ「ホンモノの四駆」が欲しいですよね。

 ということで、最新の4WD事情はどうなっているのか? 雪道を本格的に走れる「ホンモノの四駆」はどのクルマなのか? モータージャーナリストの鈴木直也氏が解説します。

文/鈴木直也
写真/ベストカー編集部


■近代4WDの元祖はジープ

1941年の誕生以来、実に77年の伝統が息づくジープ・ラングラー。左は1945年式のCJ-2A。右は新型JL型ラングラー・ジープ・ルビコン。7本スロットグリルに丸目ヘッドライトは変わらず

 特殊車両は別として近代4WDの元祖はジープということで異論はないだろう。 シンプルなラダーフレームに前後リジッドのサスペンション。

 基本パワートレーンはFRでトランスミッションには副変速機付のトランスファーが備わり、4WDを選択すると、そこからダイレクトに前輪に駆動力が供給される。いわゆるパートタイム4WDといわれるシステムだ。  

 この4WDシステム、構造がシンプルで耐久性に優れるのが特徴だが、そのかわり4WDのまま舗装路を走るのは苦手。前後車軸の回転差を吸収するセンターデフを持たないため、小回り時にブレーキング現象が発生するなど使い勝手が悪い。

 結果として、スペースとコストに余裕がある場合、本格派オフロードヴィークルはセンターデフを備えた複雑な4WDメカニズムに進化してゆく。   

■三菱 スーパーセレクト4WD-II/パジェロ

先代から採用されているスーパーセレクト4WDIIを踏襲。先代から変わらず、状況に合わせて前後の駆動配分を電子制御で自動的にフロント:33から50、リア:67から50の範囲で最適にするようになる。また、従来通り直結4WD、後輪2WDにもなる。シャーシは先代から継承されたラダーフレーム・ビルトイン・モノコックボディ(モノコックボディに前後貫通したラダーフレームを溶接した形)である

 このタイプの元祖は1970年デビューの初代レンジローバーだが、究極は現行パジェロだ。

 そのスーパーセレクト4WD−IIは、センターデフ+Hi/Lo2段切換のトランスファーを中心に、前輪への駆動を切り離した2WDモード、プラネタリーセンターデフ+ビスカスLSDによる前33/後67の不等比トルク配分モード、センターデフをロックした直結4WDモードなど、多彩な駆動バリエーションを用意。

 さらにトラクションと横滑りの統合制御(ATSC)が組み合わされている。  

■三菱 オール・ホイール・コントロール/デリカD:5

走行条件に応じて切り替えができる3つのモードを継承。駆動力を適切に配分する「4WDオート」、強力なトラクションが得られる「4WDロック」、燃費の良い「2WD」をセレクトして、多様な走りを実現

 ミニバンのなかで唯一、雪道を本格的に走れる、ホンモノの四駆は新型デリカD:5しかない(2018年11月21日から予約受注が開始され、発表発売は2018年2月頃と予想)。

 デリカD:5のオールホイールコントロールには、4WDロックモードがあるので、いざという時にも心強いトラクション性能が得られる。

 尿素SCRシステムやトルクが2kgmアップした2.2L、直4ディーゼルエンジン(145ps/38.7kgm)、8速ATなど魅力度もアップした点も見逃せない。

■トヨタ センターデフLSD式4WD/ランドクルーザー

2007年9月に発売、2015年に2度目のマイナーチェンジを行っている。マルチテレインセレクトはモードセレクタースイッチで、5つのモード(ROCK/ROCK&DIRT/MOGUL/LOOSE ROCK/MUD&SAND)のなかから路面状況に適したものを選択すると、各モードに応じたブレーキ油圧制御に自動的に切り替わり、駆動力を4輪に最適に分配するシステム

 ランクルのトルセンセンターデフLSD付き4WDは、こちらもトルセンの特性を活用して基本前:40/後:60の不等比トルク配分を行ない、センターとリアのデフをメカニカルにロックできる機構やダウンヒルアシストなど総合的な駆動力制御機能を盛り込んでいる。  

 ランクルのウリはマルチテレインセレクトと呼ぶ駆動力制御システム。泥濘や砂地など路面モードが5種類用意され、エンジントルク制御とブレーキLSDを組み合わせて各輪の駆動力を最適化。

 スイッチひとつで、誰でも簡単にベストなトラクションが得られるよう工夫されている。  

■スズキ パートタイム4WD/ジムニー

強靱なラダーフレームに、パートタイム4WDを組み合わせているジムニー

 いっぽう、こういうハイテク4WDメカニズムに対するアンチテーゼとして「4WDメカニズムはシンプルであるべし」という考え方もある。  

 オフロードでは過酷な環境になればなるほどシンプルで頑丈なことが重要になる。いくら快適でも途中でスタックしたり、故障したのでは意味がない。厳しい条件で使われる4WDほど、何よりも信頼性が重視される。  

 新型ジムニーの4WDメカが、いまだにこのパートタイム4WDなのもそのためだ。 

 ジムニーほど世界中さまざまな環境で酷使される4WDは他になく、しかもメンテに充分なお金がかけられない途上国のシェアが大きい。そこでは、高級で複雑な4WDシステムも宝の持ち腐れ。タフで簡素なメカニズムが求められる。  

 この新型ジムニーの4WDシステムは1945年デビューのジープCJから基本的に変わっていない。ひょっとすると、オフロードを走るための機構は、これ以上進化しようがないほど完成されているのかもしれない。  

■最近は電子制御カップリングによるスタンバイ4WDが主流

 本格オフロード志向のクロカン4WDに対して、よりオンロード志向のSUVで4WDの主流となっているのが電子制御カップリングによるスタンバイ4WDだ。   

 メカニズムはいたってシンプルで、基本となる2WDシステム(FFでもFRでもいい)から、電子制御カップリングを介して、もう一方の車軸へトルクを取り出すというもの。

 ビスカスカップリング全盛の頃はスタンバイ4WDというと「あぁ、生活4WDね」という感じでクロカン派からナメられていたが、これが電制カップリングの進化によって様変わり。センターデフ付き4WDのシェアを切り崩している。  

 このタイプで先行していたのは2000年デビューの初代エクストレイルだが、それまでセンターデフを採用していた三菱やトヨタが、エアトレックや3代目RAV4で電制カップリングに転向したのがターニングポイントだった。  

 タイムラグゼロでトルクが伝達できるのはセンターデフの魅力だが、自由にトルク配分を変化させたり、制御の自由度が高いのは電制カップリング。スタビリティコントロールとの相性も良い。

 この優れた特性がウケて、最近登場するSUVの4WD仕様はほぼ100%電制カップリングを使ったスタンバイ型に移行している。  

 ただ、各メーカーが同じ電制カップリングユニット(主流はジェイテクト製)を使うようになると、ライバルとの差別化はその制御をいかに賢く行うかにかかってくる。  

■日産 オールモード4×4i/エクストレイル

エクストレイルが採用しているのがオールモード4×4i。ロックモードはフロント50%、リア50%、オートモードはフロント100%〜50%、リア0%〜50%、2WDモードはフロント100%、リア0%の駆動力配分

 ここでも先行したのはエクストレイルで、2代目の“オールモード4×4i”でより高度なインテリジェント制御に進化。新たに“ヨーモーメントフィードフォワード制御”という概念が導入されている。  

 舵角センサーやアクセル開度などからコーナー進入時のドライバーの意思を予測。前輪のコーナリングフォースを確保するため、必要なら後輪にトルクをシフトさせる制御を行なう。

 考え方としてはFRベースのアテーサE−TSと同様の制御だが、FFベースだと通常のフィードバック制御ではどうしても“遅れ”が生じて違和感が残る。

 SUVで重要なアイスバーンでのリニアなハンドリングを狙おうとすると、予測制御でないと間に合わないのだ。  

 旋回が始まった後は横Gから算出されるヨーレートと舵角センサーから見た目標ヨーレートを比較、今度はフィードバック制御で前後トルク配分を変化させて目標コーナリングラインに乗せるべく前後駆動力配分が調整される。

■マツダ i-ACTIV AWD/CX-5、CX-8ほか

電制カップリングを使ったマツダのi-ACTIV AWD

 この考え方を踏襲し、さらにお得意のGベクタリング制御を盛り込んだのがマツダのi-ACTIV AWDといえる。

 マツダによると、いくら電制カップリングを巧みに制御してもエンジン側のトルクレスポンスが追いつかないと絵に描いた餅で、緻密にトルク変化を制御できる応答性の高いエンジンがあってはじめて、思いどおりのライントレースが可能になるという。  

 つまり、最新の電製カップリング4WDの制御は、相当にハイレベルなところまで来ているということ。タフネスと信頼性を重視するオフロードとは対照的に、緻密でデリケートな領域で技術競争が繰り広げられているわけだ。  

■スバル マルチモードDCCD/WRX STI

2017年6月の年次改良ですべて電子制御式となったマルチモードDCCD

 スバルといえば4WDの種類が多いことで知られるが、WRX STIの6MT仕様は前41:後59の不等比トルク配分で、しかもセンターデフの差動制限率をドライバーが自由に選べるのが特徴。

 DCCDドライバーズ・コントロール・センター・デフ)と呼ぶこのシステムはスバルだけのユニークなメカニズムだ。

 従来は電子制御と機械制御の組み合わせだったが、2017年6月の年次改良で、これを電子制御のみに一本化。「新電子制御マルチモードDCCD」として、回頭性をこれまで以上に高めている。

■スバル 電子制御式VTD-AWD/レヴォーグ2L、WRX S4ほか

VTD-AWDの構造は複合遊星歯車(プラネタリーギヤ)式センターデフ+電子制御LSD(油圧多板クラッチ) で、基本的な前後トルク配分は前45、後55

 センターデフ付きでもAT仕様では不等比トルク配分が前45:後55となり、油圧多版クラッチLSDが備わるVTD-AWD(バリアブル・トルク・ディストリビューション/不等&可変トルク配分電子制御AWD)となる。WRX S4とレヴォーグの2Lモデルがこのシステムを採用している。  

 通常時のデフフリーの状態でやや後輪寄りの駆動配分とし、前輪の縦方向のグリップ負担を減らしてFR車的な回頭性を追求したシステムで、スロットル開度やエンジン回転、車速、前後輪の回転差をセンシングし、走行状況の変化に応じてトルク配分を制御。

 低μ路では前後直結状態にも近くなるなど、曲がりやすさと走破性を高い次元で両立している。

■スバル 電子制御式ACT-4/XV、フォレスターほか

雪道や砂利道など滑りやすい道を走行する時は「SNOW・DIRT」モード、深雪やぬかるみといったタイヤが埋まってしまうような道では「DEEP SNOW・MUD」モードを設定できるXモードが採用されたフォレスター

 先代フォレスターのMT仕様にはセンターデフ+ビスカスLSDというシンプルな仕様があったが、インプレッサやレヴォーグ1.6L、レガシィ、アウトバック、XV、フォレスターなどは、ACT-4(アクティブトルクスプリット4WD)を採用する。

 このACT-4は、前後輪をつなぐプロペラシャフトの間に油圧多板クラッチを配置し、状況に応じて後輪に駆動力を伝える仕組み。前後トルク配分は60:40が基本となる。

 なかでもX-MODEが付いたアウトバック、XVやフォレスターは、悪路走破性が高く本格派だ。

■ホンダ スポーツハイブリッドi-MMD+リアルタイムAWD/CR-V

スポーツハイブリッドi-MMDに初のAWD、リアルタイムAWDを組み合わせた新型CR-V

 スポーツハイブリッドi-MMDに初めて4WDが組み合わされた点に注目。組み合わされたのは電子制御式デュアルポンプを使ったリアルタイム4WDだ。

 前後駆動力の配分方法は非常にシンプル。i-MMDで生み出された駆動力は、フロントのデファレンシャルギヤと直結でつながっているドライブシャフトを経て、車体後部に配置された電子制御デュアルポンプシステムを通じて前後輪の駆動配分が制御される。またモーターならではの緻密なトラクション性能も期待できる。

■そのほかの本格派4WDと今後の4WD

 そのほか、乗用車系やスポーツカー系などの本格的な4WDは概ね以下の通り。

 GT-Rやスカイライン、フーガの日産勢は、ATTESA E-TSからの伝統を引き継ぐアクティブトルクスプリット4WDを採用するが、こちらはFFベースのスタンバイ4WDとはコンセプトが異なるスポーツ志向の強いキャラクターだ。  

 ホンダは、NSXとレジェンドでモーターとトルクベクタリングを併用した超ハイテク4WDにトライしている。こちらは、エネルギー回生やヴィークルダイナミクスなど、従来の4WDとは次元の異なる領域に踏み込むスーパー4WDだ。 

 アウトランダーPHEVなどもそうだが、これからはモーターを活用した4WDシステムが増えてくるのは間違いないところで、そうなると4WDの設計コンセプトも大きく変化することが予想される。

 4輪インホイールモーターの4WDが登場するのも、そう遠くない将来かもしれない。

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