雪壁連なる出羽三山を走ってわかった スバルAWDの極限性能

 スバルがメディア向けの雪上試乗会を行った。その舞台となったのは豪雪地帯として有名な山形県出羽三山、2mの雪壁が迫る一般道を約200km走るルート。

 試乗車は、スバルXVとフォレスターe-BOXERの2台。はたして極寒の地で、スバルの4WD性能はいかんなく発揮できたのか? 恐怖(?!)の実体験レポートをお届けしよう。

文/ベストカーWEB編集部・小野正樹
写真/スバル


■テストコースではなくリアルワールドでの実走テスト

歴代最深積雪ランキング(2000年以降)で2位の445cmを記録した雪壁の迫る肘折温泉付近の走行シーン。1位はスバルが2018年に雪上テストを行ったコース上にある青森県酸ケ湯付近で566cm(2013年)

 スバルの雪上試乗会は、2018年からクローズドコースではなく、刻々と変わる環境下での実路、つまりリアルワールドの一般道での雪上テストを行っている。

 2018年は、八甲田山の雪中行軍で有名な十和田湖や酸ヶ湯など、積雪5mを超える日本一の豪雪地帯を走るルートだったが、今回も前回同様、過酷なリアルワールドのテストだった。 

 スバルがこのようなテストを選んだのはクローズドコースにはない、刻々と変わる環境下で、スバルのAWD性能だけでなく、視界や空調、車高といった総合的なスバルAWDの「安心感」をベースとした「愉しさ」を味わって欲しかったからだそうだ。

 試乗コースは、山形駅にほど近いホテルを出発し、修験道の霊場として知られる月山(標高1984m)、湯殿山(標高1504m)、羽黒山(標高414m)という出羽三山を目指し、最深積雪ランキングで2位の445cmを記録した肘折温泉を経て、鶴岡、酒田へ向かう約200kmのルート。

 このコースは、スバルが47年前、国産初の乗用4WDとして登場させたスバル1300バン4WD(後のレオーネ4WDエステートバン)を月山周辺でテストしていた地でもあったのだ。

東北電力が「雪道でも走行できる乗用車はできないか?」とディーラーの宮城スバルに提案したことがきっかけで完成したのがスバル1300バン4WD。後にレオーネ4WDエステート4WDエステートバンとして1972年に市販された

今回走ったルートは山形駅にほど近いホテルを出発し、肘折温泉、出羽三山神社、鶴岡、庄内空港に至る約200kmのルート

 実は嫁さんの実家が山形県鶴岡なのでこの年末年始に帰省し、月山や湯殿山周辺を走ったのだが、まさかその1カ月後に同じ場所に、しかもスバルの雪上試乗会で再び来ようとは予想だにしなかった。

 嫁さんの実家にはフリード4WDがあるので、それを借りて湯殿山スキー場をはじめ、出羽三山周辺に乗っていったが、新雪や圧雪路の怖さを身をもって体験した。

 もちろんスタッドレスタイヤを履いているのだが、さすがにオンデマンド4WDはきつかった。除雪済みの鶴岡市内の一般道では、なんてことはないのだが、湯殿山付近の一般道あたりから、曲がらない、走らない……。

 積雪20cmくらいの下りで、ちょっと油断して速度を上げると、停まらない。雪壁の30cm手前でようやく停まり、事なきを得たが……。横浜育ちの担当にとってトラウマになるところだった。

■スバルXVの基本性能の素晴らしさを知る!

最初に試乗したのはX-MODE付きのアクティブトルクスプリット式AWDを採用するXV

 そうした実体験を踏まえながら、同じ道をスバルの4WDで走ったらどうなるかと、ワクワクしながら山形駅にほど近いホテルをスタート。

 最初に試乗したのはXV 2.0i-Sアイサイト。e-BOXERではなく2Lのガソリン車。その前に、スバルの4WDシステムはどうなっているのか説明しておこう。キャラクターに合わせて車種ごとに複数のAWDシステムを用意している。

1/アクティブトルクスプリットAWD/インプレッサ、XV、レガシィ、フォレスター、レヴォーグ1.6L
特徴:燃費と安定性を重視した電子制御AWD
駆動力配分:軸重配分(60:40)を基本にロックまで可変

2/VTD方式AWD/レヴォーグ2L、WRX S4
特徴:髙出力に対応した走りの電子制御AWD
駆動力配分/前45:後55、可変

3/ビスカスLSD付きセンターデフ方式AWD/MT、海外仕様のXVなど
特徴:自然なフィーリングが特徴の機械式AWD
駆動力配分/前50:後50

4/DCCD方式AWD(MT、WRX  STI)
特徴:操る愉しさを実現させる電子制御AWD
駆動力配分/前41:後59、可変

■X-MODEの威力に助けられた!

これはれっきとした道路です。雪が降ってきてあっという前に新雪が積もった県道。車外に出るのも危険だということでXVの車内から撮影

エンジンやトランスミッション、ブレーキが協調制御して凍結路や雪道でのスリップを抑え安定した走行をサポートするX-MODE

 今回の雪上テストで試乗するXVとフォレスターe-BOXERは1のアクティブトルクスプリットAWDを採用し、悪路走破性を高めるX-MODEが付いている。

 このX-MODEは、今回のような雪道での発進や悪路の登坂などでタイヤが空転するようなシーンでの走行性能を極限まで確保する機構で、停車時または約20㎞/h以下で走行中スイッチを入れると制御が瞬時に介入し、40㎞/hまで作動する。

 山形駅にほど近いホテルを朝8時にスタートし、山形道を走る。しばらく雪がなかったが、「五月雨を集めて早し最上川」(松尾芭蕉)で有名な最上川を右手に見る県道13号線あたりから圧雪路になっていく。

 山道をおそるおそる登っていくと道の左右には2m以上の雪壁が迫ってくる。乗り替え地点となった肘折温泉付近まで、コンクリートがむき出しの路面あり、圧雪路あり、雪が溶けて凍った凍結路あり、途中雪が降り出したため20cmほど新雪が積もった路面あり……と、まさにリアルワールド、さまざまな表情をみせてくれた。

 新雪が20cmほど積もってきた道路に差しかかったところで、雪壁の真下でX-MODEのDEEP SNOW/MUDモードを試してみた。

 X-MODEのノーマルモードでは抜け出せない状況だったが、DEEP SNOW/MUDモードに入れ、さらにVDCオフスイッチを押すと、一瞬タイムラグがあったものの、トラクションが回復して抜け出すことができた。

 続いて下りの圧雪路。これは1月に月山をフリード4WDで走らせた時に恐怖を感じた路面と似たような状況だった。

 何気なく下りを少しずつブレーキをかけながら走っていると、コーナーを曲がろうとした瞬間、「曲がらない、ブレーキングをするも止まらない」となり、最後は雪壁の30cm手前で停まった、あの時と同じような状況だ。

 その時と同じことをXVのX-MODE、SNOW/DIRTモードに切り替えて試してみた。すると自動でブレーキ制御が行われて、ズリズリと滑ることなく、こちらのステアリング操作通りにトレースしながらコーナーを曲がるのだった。

 SNOW/DIRTモードに切り替えると、20km/h以下でヒルディセントコントロール機能が働いてブレーキ制御を行われるので、冷や汗をかかずにかかずにステアリング操作に集中できて、曲がってくれるという訳だ。

 もちろん、4WD性能だけでなく、XVのすばらしさはほかにもあった。雪が降っていて視界がよくない状態でも、前方および後方視界がいいので、安心感があり、乗り心地も上質。長時間乗っていても疲れなかったことも褒めておきたい。

■e-BOXERは豪雪地帯でも大丈夫なのか?

肘折温泉近くで昼食をとり、e-BOXER搭載のフォレスターアドバンスに乗り換えた

1200年の歴史があるという肘折温泉の湯治場には風情のある佇まいの旅館が連なる

 肘折温泉近くのふるさと未来館で、昼食をとった後、XVからe-BOXERを搭載するフォレスターadvanceに乗り代えて、次の中継地点、出羽三山神社を目指した。

 こちらの道路もかなりの剛の者。まだ13時を回ったところだというのに、−7度まで気温が下がり、ぼた雪が降ってきた。

 試乗車は、e-BOXERというモーターアシスト型ハイブリッドシステムと2L水平対向4気筒エンジンを組み合わせたパワートレインを搭載しているフォレスターAdvanceグレード。

 駆動システムはX-MODE付きの前後駆動力配分60:40を基本としたアクティブトルクスプリットAWDである。

 XVに比べるとフォレスターは大きいせいもあるが走りに絶対的な安心感がある。SUVということもあるが、視界がよく、乗りやすいし、乗り心地も上質だった。 

 もちろん、深い雪でもスタックすることなく安心して走ることができたし、圧雪路や凍結路でも曲がらない、止まらない、ということはなかった。

開山は1400年以上前、日本古来の大と自然、信仰の結びつきを今に伝える日本遺産・出羽三山。中継地点となった重要文化財・出羽三山神社(三神合神殿)は月山、羽黒山、湯殿山の三神を祀る。神仏習合時代の名残をとどめる特異な造りで高さ2.1mの萱葺き屋根は東北随一の規模を誇る。月山、湯殿山は冬期には積雪のため登拝できないことから羽黒山に三神を祀ると伝えられている。そのほか樹齢1000年といわれる天然記念物の爺杉や国宝・羽黒山五重塔も圧巻

■ハイブリッドにつきものの回生ブレーキは邪魔?

雪道での回生ブレーキはアンダーステアが出てよく曲がらないというが、フォレスターe−BOXERはどうか?

 ここで、フォレスターe-BOXERの回生ブレーキはどうなのか、遠くが見渡せる緩やかなコーナーで、X-MODEのSNOW/DIRTモードを試してみた。

 モーターがガソリンエンジンをアシストするハイブリッドの場合、減速エネルギーを利用する回生ブレーキが備わっているが、滑りやすい路面のコーナリング時には、前輪に制動力が加わり、スリップが大きくなり、アンダーステアが強くなる傾向がある。

 しかし、X-MODEのSNOW/DIRTモードに切り替えると、アンダーステアにならずにコーナーをクリアしていく。これは、後輪への回生量を増やすことで前後の回生量を最適化しているからだそうだ。

 オーバースピードでコーナーに進入すると、そのかぎりではないが、回生ブレーキ時のアンダーステアをこれだけ防いでくれるのは秀逸だ。

 また、アイスバーンや圧雪路、段差を乗り換える時、スリップしやすいのでアクセルワークに気を使う必要があるが、フォレスターe-BOXERの場合、アクセルペダルがダイレクトに反応してくれるので、踏みすぎになることもない。

 スバル電動パワーユニット研究実験部の稲葉之人氏によれば、「2.5Lのガソリン車に比べて、e-BOXERは、モーターのトルクを優先的に配分するため、アクセルワークの応答が1秒早くなります。また他メーカーのハイブリッドは、滑りやすい路面でのこうした制御は行っていないので、こうした点はスバルの冬期性能のこだわりだと思っていただければと思います」。

 ちなみにe-BOXERの販売割合だがフォレスターは全体の47%(2018年5月の新型フォレスター受注開始時点より)、XVは全体の36%(2018年のXVマイナーチェンジ以降)とのこと。

■4WD以外のこだわりの冬期性能

鶴岡市内にある、地元で話題沸騰中のスイデンテラス

 無事、何事もなく庄内空港へ到着、東京へ帰ることができたが、山形駅から出羽三山、そして鶴岡・酒田市内に至る、まさにリアルワールドでの試乗コースを走ってみて、スバル車の真髄を垣間見たような気がした。

 雪とはほぼ縁遠い東京で、スバルのクルマに乗っていると気づかない4WD性能は言うにおよばず、空調をはじめとするシート&ステアリングヒーター、ポップアップ式ヘッドランプウオッシャー、ヒーテッドドアミラーなどの厳冬に強い装備類、さらには視界のよさ、運転のしやすさなど、冬に対するスバルの愚直なまでのこだわりには頭が下がる。加えて、残念ながら体験できなかったが、タイヤチェーン装着時の安定性まで考慮する徹底ぶり。こうしたこだわりが、何も起きないという、絶対の安心感につながっているのだろう。

 刻々と変わる路面状況、天候のなか、スバルの思想、「安全、安心と愉しさ」を身をもって体験できた試乗会だったように思う。「雪国にはスバル」と、山形の親戚に薦めてみよう思う。

 

鶴岡市中心部には庄内藩酒井家が居城としていた鶴ヶ岡城の跡にできた鶴ヶ岡公園、藤沢周平記念館のほか、致道館や旧鶴岡警察署庁舎(写真)など明治初期の洋風建築が見どころ

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